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2009.03.03 (Tue)

原付スーパーカブ東京横断梅見の旅。

東京横断梅見の旅。まっぷ。



「今日私はある一つの旅を終えてきました。」


あたかも北海道の化け物ローカル番組「水曜どうでしょう」的なはじまり方をしたくなってしまうほど充実の旅を私はしてきました。


原付スーパーカブに乗り、東京の梅見(梅まつり)スポット完全制覇を目指す旅に出ていたのです。


何故このような過酷で愚かな旅に出たのかと問われれば、私の愛車がカブだったことと、私の名前に梅が冠として掲げられていたからという他、説明のしようがない。


だが敢えてグダグダといちいち細かく説明させて貰えるのならば、長年に渡り東京での私の活動の足となってくれているカブは、購入当初東京堂やマイウェイ、モトメビウスといったカブレストア専門店でおしゃれなカブに改造して自由が丘辺りを流しつつ、カフェでお茶なんかをさらっときめてしまうハイセンスな乗り物になるはずだったのである。


しかし、一度たりともそのような店に足を踏み入れることなく、ただひたすらノーマルのカブのままで居たため、子供に新聞配達員と間違えられ続けていたのだった。


このままでは私の哀愁は増すばかりになってしまうと思い立ち、手軽な改造とも言うべきステッカーペタペタ作戦を決行してみたのである。
すると思いのほか子供たちの視線が格好良いというような羨望の眼差しに変わったように感じられたのだ。


ここで調子に乗らない私ではない。


早速このなんとなく格好良いんじゃないカブに乗ってブイブイと自由が丘を席巻してやろうと思ったのだが、さすがにそこまでの愚行を行うには、少々の不安を覚えた。


そこでまずは東京でもおしゃれすぎないスポットに行こうと思い立ったのである。
それが二月のとある日だった。


そこでどこにいこうかと思案する日々を過ごしていたのだが、某映画撮影のため撮影場所へ向かう電車に乗っていたところ、車窓の景色にほんのりと色づいた大量の梅の木が目に飛び込んできたのである。


これだっ!と私は確信した。


この場所は東京から遠く離れた田んぼ地帯だが、都内でも要所要所には梅の花を見物できるような、梅見スポットがあるのではないかと思ったのだ。


撮影期間が終わるや否や、早速私は調べまくった。「東京 梅見」「都内 梅見」「東京 梅まつり」等々、暇さえあれば梅の花見スポットを探しまくっていたのである。


そして出た結論は、東京梅見全制覇!しかし、無料のところで…という企画であった。


色々と調べてみたのだが、梅まつりを開催している場所では入場料を取るところが結構あったのだ。
その入場料を払って全部見ていくととんでもない金額になり、私の懐事情は梅見のために明日の飯をも食えぬ生活へと成り下がってしまうという危惧が感じられたため、無料のところに絞って見に行くことに決めたのだ。


しかし、これでも多い。


梅の木の生えている場所であれば梅見スポットとしてかなりの数が名を連ねているわけで、それが10本程度のしょぼい場所だろうと、100本以上の素晴らしいところだろうと1つとカウントされてしまう。
そんな10本のところにまでいちいち格好良くなったんじゃないカブでブイブイ言わせに行くのは面倒だと思い、そこで私が考え出した完璧なる梅見企画の全容はこうである。

つづく。
次号⇒企画発表。

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以下目次。
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2009.03.06 (Fri)

企画発表。 原付スーパーカブ東京横断梅見の旅。

この記事は「原付スーパーカブ東京横断梅見の旅」の連載旅エッセイ2ページ目です。最初からご覧になりたい方はこちらからどうぞ。⇒原付スーパーカブ東京横断梅見の旅。

東京横断梅見の旅。まっぷ。


ちょっと格好良くなったかもしれない愛車スーパーカブを乗り回したいがために、私は梅見をすることを考えつき、色々と調べ尽して無い頭を使って導き出した完璧なる梅見計画の全容はこうである。


東京に点在する無料の梅見(梅まつり)スポットで、100本以上梅の木が生えているところを原付スーパーカブに乗りたった一日で完全制覇するという、頭が弱い子でなくては考え付かない過酷で無謀な旅を企画したのだ。


この企画を考えついたとき、私は自画自賛した。


浮かれまくりこれから巡りゆく梅見スポットや梅まつりの宴への参加などを想像すると、もしや旅の途中で恋物語なんかも展開されるのではないかと、この旅に過剰なまでの期待を抱いてしまうのであった。


「善は急げ」とはよく言ったもので、私は早速2009年2月21日に梅見をすることを決めて旅支度を始めたのである。


グダグダといちいち細かく説明を聞いてくれたあなたに、それではこの旅の工程をやっと説明しよう。


大きな地図で見る

東京駅(千代田区)→小村井香梅園120本(墨田区)→亀戸天神250本(江東区)→湯島天満宮(湯島天神)400本(文京区)→赤塚溜池公園213本(板橋区)→羽根木公園700本(世田谷区)→井の頭恩賜公園170本(武蔵野市)→小金井公園100本(小金井市)→薬師池公園250本(町田市)→高尾梅郷10000本(八王子市)→おまけ吉野梅郷25000本(青梅市)有料200円。


このような充実のラインナップで、日の出から日の入りまでの約12時間をかけて無料9か所におまけの有料1か所をつけて全10個の梅見スポット約37000本を巡る東京横断150キロの旅を実行したのである。

つづく。
次号⇒旅立ちの朝。

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2009.03.10 (Tue)

旅立ちの朝。 原付スーパーカブ東京横断梅見の旅。

この記事は「原付スーパーカブ東京横断梅見の旅」の連載旅エッセイ3ページ目です。最初からご覧になりたい方はこちらからどうぞ。⇒原付スーパーカブ東京横断梅見の旅。

東京横断梅見の旅。まっぷ。


旅に出る前夜というのはどうしてこんなに興奮してしまうものなのだろう。


晩御飯の一人鍋につい多めに入れてしまったにんにくを差し引いても、この昂りは異常であり、全盛期のボブ・サップよりも鼻息荒くなかなか寝付けぬ夜を過ごすこととなった。


なかなか寝付けなくても寝たら起きないのが私の欠点である。


震度6の地震があっても全く目覚めることのない深い眠りを日々無意識のうちに心掛けてしまっているので、早起きをしなくてはいけない日は事前の準備が必要である。


それは、10個にも及ぶ目覚まし時計のセットである。


様々な音でセッティングして手を替え品を替えして眠り姫と化した私を王子のキスの替わりに現実へと引き戻さねばならない。


今回の旅は事前の予定よりもさらに過酷を極めることに実はなってしまったのだ。


当初の予定では、朝5時半に起床して日の入りの18時をリミットに全10か所を巡ろうと思っていたのだが、急遽この日に映画製作の打ち合わせが入ってしまい、リミットは16時までという2時間の時間短縮が決まってしまったのである。


だから一人旅とはいえ遅刻は厳禁なのだ。


そして迎えた朝。私は起きた。
王子の優しいキスを受けたかのように、目覚ましの鳴る前の5時に起きてしまった。
眠りに落ちたのが大体0時頃だったと思うので、5時間後に何故か眠りから覚めてしまい、30分睡眠時間を損してしまったのだ。


しかし寝起きはすこぶる気持ちよく、男でありながらも王子のキスの余韻にしばし浸ってしまうのであった。


遮光カーテンを開けると、外はまだ暗く街は眠りを貪っているようだ。
窓を開けると信じられない寒さが私の身を切り裂き、もう目覚めているのにさらに目を覚まされる。
あとで調べて分かったことだが、当日のこの時間の気温は4℃ということであった。


これからこの寒さの中をカブで走り出すのかと思うと、抜け出したばかりの布団にもう一度入りたい衝動がふつふつと湧きあがってくるが、そこは忍の一字で寒さに負けじと服を着替えて完全武装の着ぶくれ男と化すのであった。


準備万端整えていざ出発!ここは東京駅…ではなく大田区である。


出発地を旅っぽくするために誰に張ったのか分らない見栄を張ってしまい東京駅にしてみたが、私が住んでいるのは大田区なので、まずは40分位かけて出発地へと出発するという愚行をしなくてはならない。


ご近所さんの眠りを妨げないように、そろそろと5時50分に家を出てカブを押していき、少々大きめの道路に出たところで、キック一発カブの眠りを覚ます。


一発でエンジンは火を噴くものの、寒さのためかエンジン音は安定しない。
旅立ちを前にはやる気持ちを抑えつつ、少々の暖機タイムをとり、ようやく出発!


近所の住宅地を抜けて国道一号線に出ると、あとはひたすら皇居を目指して北上するルートをとる。


いつも利用している道路なのに目に飛び込んでくる景色は何故か新鮮で、普段よりも視界が1.5倍くらい広がり、「このビルこんなに高かったのか。」とか「こんなところに飲食店があったんだ。」「あっマンションのベランダに女性物の下着が…」など新たな発見を楽しみ走り始めたのである。

つづく。
次号⇒いざ東京駅へ。

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2009.03.13 (Fri)

いざ東京駅へ。 原付スーパーカブ東京横断梅見の旅。

この記事は「原付スーパーカブ東京横断梅見の旅」の連載旅エッセイ4ページ目です。最初からご覧になりたい方はこちらからどうぞ。⇒原付スーパーカブ東京横断梅見の旅。

東京横断梅見の旅。まっぷ。


国道一号線の第二京浜を北上していけばほぼ迷うことなく東京駅に着けると調べはついていたが、私は東京に約10年住んでいながら東京駅を利用したことは2.3回しかなく、しかもカブで駅まで行ったことはなかったので少々不安があった。


普段のカブの行動範囲は主に大田区中心で、少し遠くて目黒・渋谷・新宿といった山手線の左側を新聞配達員に間違われながら行動していたので、今日これから移動する先々は、どこも訪れたことのない未知の道中なのだ。


元来私は出不精である。
外にいるよりも家に居たいというプチ引きこもりの症状を患っているので、今回のような旅を普段からホイホイと行っている体質ではない。


ならば何故このような旅を実行に移したかといえば、格好良くなったかもしれないカブを見せびらかしたいのは勿論のこと、その他にもさらに事情があった。


実はホンダ本社からスーパーカブの東京でのイメージを向上させるために特命の指令を受け、ギャラ100万で東京中を走り回ってくれと頼まれていたのである。
というのは、もちろん嘘で、「たびを」という一冊の小説に出会ってしまったからである。


この「たびを」という本は、頼りない19歳の浪人生が、ある事情によりスーパーカブに乗って日本一周の旅に出るというひと夏の物語なのだが、青春文学・1005ページ・総重量1キロという分厚くて敷居の高そうな本であった。


しかしスーパーカブと旅に惹かれて読み進んでみたところ、カブ旅とエッチと少々文学って感じの非常にバランスのいい作品で、ついつい新たな旅先での恋愛=エッチを期待して1005ページを読破してしまったのである。


読後感と言えば、自分も旅に出たいという衝動と主人公が旅先で感じた文学的思想を自分も味わってみたいという憧れであった。


19歳の少年に憧れるというのも変な話であるが、著者の花村萬月さんは私よりも年上のいいおっさんなので、彼に憧れたとでも言うべきかもしれない。


男のロマン満載の旅に少々の不安はつきものである。
行ったことがない所だからこそ新しい発見や出会いがあると信じて東京駅へとカブを走らせたのだ。


ひたすら国道一号線の桜田通りを進んでいくと東京駅付近の目安となる皇居が目の前に飛び込んできた。
5車線はあろうかという道を左折専用レーンの一番左から右折専用レーンへと移動するときは少々不安になるものだが、まだ時刻は7時前であり、土曜日ということもあって車の通りは少なくて、問題なくクリアーでき右折する。


すると、皇居に沿う道として左折出来る道が見えたので曲がってしばらく進むと、そろそろ東京駅が見えてもよさそうなのに見えない…。


「間違えたかもしれない。」と、不安が襲ってくる。
なにしろ全行程10か所の梅見を旅の使命としているので、道を間違えての時間のロスは完全制覇の失敗を高めてしまう。


なんとなくグルグル回っていたら見つけられるかもしれないが、時間のリミットがある以上間違いの修正は早いほうがいいので、皇居広場を過ぎたあたりで一旦停止して地図を開く。


…間違えていた。一本手前を左折してしまった。皇居に沿う道の一本先を左折だったのだ。


しかし、決して行き過ぎてはいなかったので、2段階右折が出来ないっぽいこの道から、カブを押してなんとか東京駅へと到着したのである。

■今日のおさらい。(走行ルートが見れます。)



■今回紹介の本。⇒たびを 花村萬月

うめ。
次号⇒出発地から出発。

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2009.03.17 (Tue)

出発地から出発。 原付スーパーカブ東京横断梅見の旅。

この記事は「原付スーパーカブ東京横断梅見の旅」の連載旅エッセイ5ページ目です。最初からご覧になりたい方はこちらからどうぞ。⇒原付スーパーカブ東京横断梅見の旅。

東京横断梅見の旅。まっぷ。


やっとの思いで東京駅に着いたものの私のイメージしていた東京駅とは一変していた。


私がイメージする東京駅とは、よくニュース映像等で扱われるドデーンと茶色の駅舎が威風堂々そびえ立っているというものだ。


しかし目の前にそびえ立つ東京駅は、「壊れかけのレディオ」ならぬ「作りかけの駅よぉ」だったのである。


茶色の駅舎の周りには、白の工事用防護壁が立ち並び、駅舎上部のみを少々見せているだけの、無残な姿であった。


この事実を目の当たりにした私の悲しみは、札幌に2年程住んでいながら、時計台の改修工事期間中のため、在住中一度もその姿を拝むことなく札幌を去ってしまった私の大学生時代に匹敵するくらい虚しさを覚えるものであった。


カブと東京駅。せっかく出発地を東京駅と定め、その茶色の威風堂々たる東京駅をバックにカブの記念撮影をしようと思ったのだが、仕方がない。
格好良くなったかもしれないカブの記念すべき一枚目は、格好良くなるであろう東京駅と共にパシャリとケータイに収めるのであった。



そして、いざ出発!


時刻は7時ジャスト。カブのメーターは自宅を出発した13828kmから13844kmに変わり、これからどんどんとこの距離が増え続けていくはずである。


自宅を出てからすぐに給油して満タンにしたので、3リッターちょいしか入らないカブでも、今日の全行程150キロは一度の給油もなしに終了出来るであろう。


向かうべき記念すべき第一梅見ポイントは、「小村井香梅園」である。


千代田区の東京駅から墨田区の小村井香梅園までは、約8キロの道のり、20分ほどで着けると事前のグーマップによるルートガイドで割り出されていた。


颯爽と土曜日の人の少ない東京駅を走りだしたちょっと格好良くなったかもしれないカブは、誰からの視線も浴びることなく淋しく第一梅見ポイントを目指しひた走るのであった。


「迷子厳禁!その道間違いが命取り」を自らのスローガンに、信号待ちのたびに地図をチェックして現在地を確認して進んでいく。


「東京駅を出て15号線から14号線」と初めてのおつかいの子供のようにひたすら反復しつつ、目は道路表示を見逃してなるものかとランランとぎらつかせて日本橋なんちゃらという地名をどんどんと通り過ぎて行った。


14号線の京葉道路に入り墨田川が流れる両国橋を過ぎた頃には、少々落着きを取り戻し、周りの景色を楽しみつつ、といっても、ビルがせめぎ合っている道路なのだが、亀戸駅を目指して直進していったのである。


すれ違う通行人の視線が「あのカブ格好良い!」というものを一度も味わうことなく、この直進で本当に合っているのだろうかと少々不安になり始めた頃に亀戸駅の表示が出てきたので、左折。
北上していき、小さな橋を渡ると香梅園梅まつりの看板が見えて迷うことなく無事到着。


しかし、時刻は7:40メーターは13853kmと当初の計画とは多少のずれを残して小村井香梅園の梅見を始めたのであった。

■今日のおさらい。(走行ルートが見れます。)



つづく。
次号⇒小村井香梅園の梅まつり。

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